耳鼻咽喉科ほりクリニック

感動を持ってダイナミックな”解剖学”のご紹介
基礎医学の学習と教育に潤いを与える新たな視点

ほりクリニック
堀雅明(耳鼻咽喉科)塚原美穂子(精神科)興津寛(漢方皮膚科)
エーアンドエムアイ
藤原卓也(画像診断医)

1.はじめに

 昨年の東日本大震災に伴って福島の原子力発電所の一連の事故は、改めて科学技術の一方的な発展がはらむ大きな危険性を露呈しました。さて、今日の医学を冷静に見渡すとき、同様の大きな見落としがあるのではないのでしょうか。増える一方の多剤耐性菌と立ち後れた現状認識、再生医療の過剰ともいえるマスコミこぞっての無批判で一方的な礼賛。こうした現状にあって、医学に対して、もう一度、俯瞰的で冷静な検証と、真に新しい視点の導入が必要なのではないでしょうか。  今回は、当院が従来取り組んでいるアントロポゾフィー医学(文献1.2)というアプローチの基礎医学分野の骨学への応用の一端を紹介します。内容は、主に間もなく翻訳本が出版される“Anatomy”(文献3)の内容を引用しながら、従来の医学的知識に新しい視点を付け加える、拡張された医学的視点に基づいて進めていきます。

Louis Bolk 研究所について

Louis Bolk 研究所は1976年以来、有機農業、栄養および保健に関する革新的な科学的研究の草分けとして活動してきました。本研究所が目指しているのは科学的研究の基礎を拡張することです。 従来の研究方法では不十分な領域においては新たな方法が探求されています。例えば、現象学、参加型調査、画像形態学的研究、意識的-直感的方法などであり、そこにおいてはルドルフ=シュタイナーの哲学がインスピレーションの源泉となっています。

Guus van der Bie 医学博士(1945年生まれ)

1967年から1976年まで解剖学および発生学の講師としてオランダのユトレヒト州立大学医学部に勤務。1976年からは家庭医として働きながら、彼は健康なあるいは病気の人間を理解する上でのゲーテ的な科学の重要性を認識してきました。彼は診療に次ぐ仕事として学生、医師そして療法士たちの教育に携わり続けています。1998年には現在の生命医科学による人間への科学的なアプローチを補完するための「医学教育刷新」プロジェクトの創始者のひとりとなりました。

プロジェクトについて

「医学教育刷新」プロジェクトは、現在の生命医科学的事実をゲーテの現象学的方法を用いることにより、いかにして異なる方向から理解できるかを示すモジュールを生み出すことを目指しています。この結果として生命医科学に新たな概念が生じます。こうした新たな概念は生体における生化学的、生理的、形態学的因子とその時間的、空間的発展に関する理解をとらえなおします。
これによって例えば、意識、心理および行動と身体の形状との関係を見て取ることが可能になります。

BOLK 医学学習の手引きは

現行の医学教育を補完し、とりわけ今日の生命医科学の基礎における人間の特質を明らかにするものです。解剖学、生化学、生理学、薬理学、胎生学、抑うつ障害、呼吸器系(疾患と治療)、治癒プロセス(修復機能)、免疫学など、多様な分野にわたって出版され、Web上で、無料でダウンロードできます。日本語への翻訳は、解剖学と胎生学のみ終了しています。

2.骨学のアントロポゾフィー医学的理解

人体の骨にみられる対極と統合

骨の構造の全体像には、基本的な対極がみられます。仏教の守護神、金剛力士の仁王像では、口を結び、手を握り怒りを抑えた吽形(うんぎょう)。

一方、開口し怒りをあらわにし、手を開いた阿形(あぎょう)。ここには、対極が表現されています。実は、人体の骨の形態学的特徴にもこの対極がみられます。頭部に凝集的な求心的な極があり、四肢に向かって拡散的、遠心的極があります。

さらに、仁王も、もともと一人の守護神の顕現としてみる時、その手の有り様も、一人の手の握った姿、開いた姿と理解され、対極に見えても、本質は統合されていることが理解されます。

人体の骨の構造も、その胸部において、まさに統合が見事に現れています。

Q1: 頭蓋骨に特徴的な形態とその背景にある原動力とは何か?
A1: 人間の頭部は主として脳頭蓋を構成する骨の「面」によって形作られています。 「球」は人間における頭蓋の形態と発達の基礎をなしている形です。平面および球は頭部と頭蓋の形態学的特徴です。そこには、中心の一点に向かおうとする求心的な原動力が働いています。
Q2: 四肢に特徴的な形態とその背景にある原動力とは何か?
A2: 長骨は「放射状かつ平行な構造」を持っています。 四肢の形態における目立った現象のひとつは「拡散」の原理です。ここに働く原動力は、遠心的な原動力です。
Q3: 胸郭に特徴的な形態とその背景にある原動力とは何か?
A3: 胸郭の形態学的特徴は、リズムと変形です。そこにはリズム的な原動力が働いています。
この原動力は、特定の形態が完成し、時間の静止した空間においては、その形態を通じて現れます。また、形態が変容可能なときには、時間の流れの中で、心臓の収縮と拡張、肺の吸気と呼気にみられるように、機能の中に現れます。
形態と機能の相互補完的関係
同じ原動力から、対極的な形態と機能が一体となって生じています。そして、形態が固定的(癒合して可動性のない頭蓋骨)で、機能が高度に内的(思考活動や感覚活動)で質的な極としての頭部。

アントロポゾフィー医学では、神経感覚系と呼びます。)ただし、頭部の下方では、やはり可動性に富む顎関節や舌があり、頭部内での対極が見て取れます。
一方、横隔膜から下の腹腔臓器を内包する部分と四肢を含む極(アントロポゾフィー医学では、いわゆる“四肢代謝系”と呼ばれます)。
腹腔内では、四肢に比較して固定的で機能も質的な臓器、そして消化管のように可動性が高く、機能面でも食物の移動のように量的な要素が強い対極が見えます。
さらに、四肢は空間内で運動という過程の中で流動的と可動性に富み、機能も、運動に代表される外的で量的な形で重力や外界に物理的、量的に働きかける極を構成しています。
この中間には、胸郭内の心臓や肺に代表される、両極の中間的性質が現れています(アントロポゾフィー医学では、“リズム系”と呼びます)。
さらに、この“リズム系”の中にも、対極が現れています。すなわち、機能が優位で、形態が比較的固定している肺。筋肉に富み可動性に富む心臓。その上で、全体としては、頭部と四肢の中間的な形態と機能の相互補完的関係がとても顕著に現れています。

3.結語

アントロポゾフィー医学の一環としての医学教育刷新プロジェクトの紹介と基礎医学の骨学に関するこの分野の視点を紹介しました。今回紹介したように、従来の医学知識は、まだ、未完成であり、新たな視点を付け加えることで、ようやく一貫した統合された生きた知識へと昇華できます。こうした拡張された基礎医学(文献4.5)が基盤となるとき、はじめて新たな拡張された臨床医学(文献6.7)が展開可能となります。東洋の伝統をふまえて発展してきた日本にこそ、こうした真に統合された医学が発展することができるのではないのでしょうか。

文献

1.Anthroposophic Medicine , Effwctiveness,utility,safty, by Kienle,Kiene,Albonico ,Schttauer
2.アントロポゾフィー医学における痛みの本体論とその治療
ペインクリニック Vol.29 No3(2008.3) 325~335
3. Anatomy - Human Morphology from a phenomenological point of view
Guus van der Bie, M.D. Publication GVO 03 77 pp
Price: 10ユーロ,-; Student version: 5ユーロ,-; Download (750 kB)
日本語訳は、近日中に出版されます。
4.Functional Morphology , The Dynamic Wholeness of the Human Organizm by Johannes W. Rohen , Adonis Science Books
5.The Hormony if the Human Body , musical Principles in Human Physiology by Armin J Husemann ,Floris Books
6.Innnere Medizin by Matthias Girke , Grundlagen und therapeutische Konzepte der Anthroposophischen Medizin ,Salumed verlag
7.Individuelle Padiatrie by Georg Soltner , Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft mbH Stuttgart
Louis Bolk 研究所
Hoofdstraat 24 NL-3972 LA Driebergen
ホームページ: www.louisbolk.nl

Bolk医学学習の手引き(1)解剖学
現象学的見地からみた人間の形態学
著者: Guus van der Bie / 翻訳: 藤原 卓哉
出版社名: Louis Bolk 研究所
1000円
精巧堂印刷所のホームページから購入することができます。[詳細・購入]