▪️親や、指導する人は、言葉のみではなく、
子供の鼻にちり紙を当て、身を持って指導しましょう。

鼻のかみ方と鼻洗浄情報

鼻のかみ方(ガイドライン試案)

1.目的ならびに目標
このガイドラインは、医師が、小児急性中耳炎患者の診療にあたり臨床的判断を支援するために急性中耳炎の診療ガイドラインと並行して活用され,また患者及び家族が、治癒の促進に向け取り組むべき個別の課題を提示し、中耳炎患者の診断・治療に有益となることを目標としたものです。

2.利用者
主として正確な鼓膜所見の評価,鼓膜切開を含む耳処置を施行し得る耳鼻咽喉科医、そして医師と共に治療の向上に取り組む患者さん及びご家族を対象者としたものです。

3.鼻をかむ目的
目的は、しっかりとたまった鼻汁を出し切ることです。(特に、幼児、小児では、副鼻腔が、発達過程で小さいので、しっかりかみきることによって、副鼻腔にたまっている膿性鼻汁をかなり、出し切ることが可能)

4.正しい鼻のかみ方の効果
・副鼻腔炎、特に小児副鼻腔炎の治癒の促進。
・中耳炎の改善の促進、再発率の減少、予防。
・ 後鼻漏による特に夜間、所長の咳の軽減、気管支炎への進行の予防。
・ 抗生剤投与の減少による耐性菌の減少。
(多剤耐性菌はオランダ3%、本邦60~70%)
・鼻をかませ、その様子を観察することで、子供の呼吸の状態が把握できます。
 (たとえば、浅く、弱い呼吸であるかなど)
・繰り返す鼻かみ訓練を通じて、呼吸をしっかりすることの動機付けと訓練になります。
・鼻のかみ方の訓練を通じて、親の子に対するしつけの訓練にもなります。
・ 子供、親に、自らの体に対する積極的関与、健康管理への自己責任を学ぶ機会を与えます。

5.正しい鼻のかみ方
・片方ずつかむ。
・口をしっかり閉じてかむ。
・ 適度の強さを持ってかむ。
・十分空気を吸い込んでからかむ。
・ 鼻汁を出し切るまで、繰り返しかむ。
・ななめ下を向いてかむ。(自然孔の位を考慮すると、左側をかむ時には右斜め下に首をねじり、 右をかむ時には左斜め下に首をねじるという意見もあります)


6.鼻のかみ方の指導上の注意点
・親や、指導する人は、言葉のみではなく、子供の鼻にちり紙を当て、身を持って指導しましょう。
・ 本人にも、効果を実感させることで意欲を促しましょう。
・特に、しっかり口を閉じているどうかは、たびたびチェックし、不十分なら、指導を繰り返しましょう。
・耳管は、乳幼児では、発達過程にあります。したがって、一部の例では、不十分な耳管閉鎖機能により、鼻汁が、中耳へと逆流する可能性があるので、個別性に十分配慮し慎重にすすめましょう。
・急性中耳炎の発症直後には、多くの場合、子供さんが、いかに誤ったかみ方のなか、あるいは、いかに誤ったかみ方なのかを親ごさんに対して示すのみに留めることも大切です。その後、慎重に様子を観て、学習を始めていくようにしましょう。
・特に若年のお子さんの場合、ちり紙を鼻に充て、左をかませる時には、右親指を右の鼻にあて、第2指、3指を上から、下へと3か所ぐらい移動させながらかみ分けると、より効率的にかみきることが可能となります。

7.訓練上の工夫
お子さんに教えるときには、時には、ちょっとした仕掛けも必要です。医師が、ティッシュをちぎって、片方の鼻に入れ、思いっきり押し出し、ティッシュが飛び出すのを見せると、子供たちは、大笑いします。笑いと同時に、鼻かみの時に大切な、前もって十分吸い込むと、後で、しっかりと吹き出すことができるということを明確に伝えることができます。
また、しばらく、ちゃんとかめていた子供でも、急に、いやになって親に鼻をかませなくなることもあります。それでも、根気強く続けていると、またできるようになってくるものです。親にとっては、これ自体が躾の訓練にもなります。躾が苦手で、子供のいいなりになる親の増えている現状では、医師側の教育的手腕が問われます。

8.鼻すすりの問題点
鼻をすすること自体は、鼻汁が出てくるのと同じように、後鼻孔付近に鼻汁がたまった時に、ほとんど無意識にやる行為です。これに対し、“すすってはダメですよ”と伝えることに、年齢がある程度いった子供では意義があります。ただし、低年齢では、”~~してはダメです“という否定的な指示は実行しにくいことは、教育学の視点から知られています。特に、無意識のうちにすすることを、意識して止めることは、年齢が若いほど学習しにくいことなのです。意識的に、鼻をしっかりかむ習慣がつくにつれ、必要に応じて耳管を閉じることが学習されてきます。それにつれ、たとえ、すする時でも、耳管を閉じるようになってきます。実際、耳管の閉鎖と開放の機能は、発達過程で学習を通じて獲得されるものです。そのために、しっかりと、繰り返し指導していくことが必要なのです。


小児副副鼻腔炎に対する鼻洗浄液の効果


正しいかみ方の効果をより高める方法として、ぜひ実践したい方法が、鼻洗液の利用です。

以下に滅菌精製水の作り方と効果を示します。
・水  500ml 食塩 5g 重曹 2.5gを溶解してペットボトルなどに保管、
点鼻用の容器に入れて(当院では水差しを転用)点鼻する。(頭を前に45度、点鼻をする側の反対側に45度傾けて、点鼻をします。)小さい子では、そのあと吸引、大きい子では鼻をかみます。

・研究では、抗菌剤を使用せずに2週間の鼻洗浄を行った症例では、(鼻汁、鼻閉、咳、喘鳴、夜間睡眠障害)が、70%で消失し、他覚的症状としても鼻汁の正常、鼻汁の量、後鼻漏も55~70%改善した。
*なお、当院では、SK点眼ビン茶色(SHINRYO)10mlに作り置きし、患者さんに配布しています。


しっかり噛んで食べる習慣をつけること

鼻をしっかりかむには、口がしっかりと閉じる必要があります。この訓練は、実は、口輪筋をはじめとする口の周囲の咀嚼筋肉群を鍛えることにもつながります。結果として、口呼吸傾向の改善に役立ちます。
また、咬合の強化をとおして、脳血流の増加にもつながります。
実際、鼻副鼻腔炎症状(多くの場合、アレルギー傾向を伴ないますが)がある時には、副交感神経が優位になり、意識状態も、ややボーとして、傾眠傾向に傾きがちです。鼻をかむ、という意識的な行動は、交感神経を優位にしますので、意識を目覚めさせるように働き、自律神経の面からみても治療的効果があります。
こうした点から、鼻をかむ練習と並行して、ご飯のときにしっかりとかむ習慣をつけることも、相乗効果を得ることになります。


身の生体機能の障害の部分的現れとしての中耳炎

最近、one airway, one disease という視点が注目され始めています。まだ、その本体に関しては試行錯誤段階かもしれません。中耳炎という病気も、呼吸器官の一環に起きている病態です。従って、少なくとも呼吸器全体の病理に関連していることは、容易に理解できます。
鼻のかみ方の指導を通じて、多くのお子さんの呼吸を観察してきました。その結果、確かに呼吸が浅い、あるいは、十分息を吸って吐きだすという意味において、不十分で浅い呼吸習慣が多くの例に観察されてきました。従って、鼻のかみ方に限らず、より深い呼吸が出来るように具体的に指導することも大切なポイントであると確信しています。
最近、当院では、症例によっては風車を配布し、呼吸訓練をするよう指導する試みを実験的に始めています。
当院では、オイリュトミーという運動療法を指導する例もあります。


普通牛乳・乳製品の大きな課題

当院では、従来、乳幼児を中心に、牛乳乳製品を制限することで副鼻腔炎や中耳炎の改善する例を経験してきました。これは、単にアレルギーの関与にとどまらない多面的な視点からの指導です。 最近、ようやく、大田区でも本格的に普通牛乳の栄養学的問題点に注目が集まっています。高野英昭先生(大森医師会・高野医院)を中心に学校給食に低脂肪、無脂肪牛乳を取り入れる要望が出され、さらに、大森医師会が中心となって、学校給食における牛乳の大きな問題点に関する基礎研究が始まるところです。
実際、英国、米国では学校給食での普通牛乳の提供は法的に禁止されています。
また、デンマークでは、普通牛乳に脂肪税を課税しています。こうした背景を考えれば、保育園や乳幼児における普通牛乳の摂取が大きな問題であることは十分理解されます。
動物性脂肪、飽和脂肪酸は、多様な炎症反応を誘導するので、副鼻腔炎、中耳炎において関与することは容易に想像できることと考えます。
こうした問題も、今後、耳鼻科医が注目すべき重要な課題なのではないでしょうか?


まとめ

耳鼻咽喉科臨床、ひいては、医療全体の改善に関するモデル提示 今回、まず、現在のガイドラインの問題点を、中耳炎治療のガイドラインを例に指摘しました。
続いて、この問題点を踏まえて、正しい鼻のかみ方のガイドラインの試案を提示しました。
従来の中耳炎の治療に、正しい鼻のかみ方の指導を加えることで、より治療効果が高まると考えます。さらに、鼻すすりを減らし、鼻洗液の利用を進め、ご飯を食べるときにしっかりとかむ習慣をつける、しっかりと呼吸できるように指導するといった多様なアプローチを加えることで、さらにいい結果に結び付くと考えます。
今後は、図2に示すように医師の行う医療的、治療介入に、患者さんの側の自助的、養生的な介入を統合することで、より効果的な治療結果につなげられる可能性があると考えます。
*本論文は、大田区医学会(H23.3.12)で発表し、投稿した論文をもとに一部加筆し改編したものです。


参考ホームページおよび文献
急性中耳炎の診療ガイドライン
医療情報サービス Minds(マインズ)厚生労働省科学研究費補助金により公開中 [リンク]

大田区医学会誌 vol.3 2011 38-40

大王製紙ホームページ
正しい鼻のかみ方アンケート調査結果 [リンク]

高野医院ホームページ [リンク]