耳管開放症

耳管開放症について

耳管とは

耳管とは、図に示すように鼻の後ろ、下はのどにつながる部分から、鼓膜の奥の空洞(中耳)に連なる管状の器官です。健全な人では、耳管はしっかり閉じていて、時々無意識に嚥下して中耳の中の圧力が常に一定に保たれています。外部から音が入ってくると鼓膜が振動し、その振動が耳小骨という骨に伝わり、さらにカタツムリ状の蝸牛へと進み、この中で液体の振動になって、音として仕分けされ、神経を介して脳へと伝達され、音が認知されます。

耳管開放症を引き起こす原因

耳管が正常な人では、中耳の中の圧(中耳圧)は、一定です。そのおかげで、鼓膜から耳小骨への伝達が適切に調整されます。大きな音が入ってきたときには、鼓膜と耳小骨とそれに連なる筋肉群が伝達を制限して、蝸牛に強すぎる振動が伝わらないように作用します。

一方、小さすぎる音に対しては、振動を増幅して、蝸牛へしっかり音が伝わるように調整します。中耳の内圧が一定の時には、この空間は体の一部となって自覚されることはありません。ところが、耳管が解放していると、体の一部がその一体感から抜け落ちてしまい、様々な違和感を生じてしまうのです。同様の仕組みで、耳管のゆるみに伴って次のような症状も自覚することがあります。

耳管開放症の主な症状

耳管開放症の症状は横になったり、前向きにかがんだりすると症状が一時的に軽くなったり消えたりします。
その理由は、横になると耳管の周囲の血流によって、耳管が圧迫され閉じやすくなるからです。
姿勢によって症状が変化することが、診断の上でとても参考になります。
実際、突発性難聴のような他の病気では、症状は変化しにくいのが通常です。

01

耳がふさがった感じがする(耳閉感)

この症状は、人によって様々な表現で自覚されます。“水の中に入っている感じ”という方も多いです。この症状を、“耳鳴り”と訴える方もいます。

02

自分の声が響いて聞こえる(専門的には自声強聴)・自分の呼吸音が聞こえる

これらの仕組みは単純です。通常は閉鎖しているべき耳管は、余計な音が鼻やのどから逆流しない、逆流防止の弁としても機能しています。これが緩むと、余計な音の侵入を招いてしまいます。

03

その他

当院の患者さんに聞き取りを行ったところ、下記のような症状がありました。

  • 耳閉感(耳が詰まった感じがする)…88パーセント
  • 自声強調(自分の声が大きく響く)…75パーセント
  • 耳鳴り…74パーセント
  • 難聴(聞こえにくい)…59パーセント
  • 自分が呼吸する声が大きく響く…46パーセント
  • 周りの音が響いて聞こえる…37パーセント
  • 鼓膜が動いているように感じる…37パーセント
  • 耳鳴りが脈に合わせて変化する…36パーセント
  • ふらふらする・めまいがする…35パーセント

当院の治療方針について

「いつごろから、症状が出始めましたか?」
当院はこの問いかけを大切にしています

「いつごろから、症状が出始めましたか?その当時、思い当たるような生活上の変化がありましたか?」実はこの病気の改善には、この問いかけが最も重要なのです。そして、残念ながらなかなか医師から問われることのない質問でもあります。耳管開放症は、多くの場合、様々なストレス背景を伴って発症することが多いのです。“火の無いところに煙は立たず”というコトワザがあります。原因をしっかり探ることは、結果としての病気の回復への重要な一歩なのです。

当院では、皆様とともにチームを組んで、いわば探偵のように、”なぜある時期から症状が出たのか、特定の場面で悪化するのか?“といったように様々に探索を進めます。それまでの受診歴、治療歴、症状の経過、生活背景、成育歴、また明確なストレスの関連性があるのか、ないのかの探索。とは言え、初診時からストレスとの関係がはっきりしている場合と、そうでない場合があります。明確でない場合、別の原因なのか本人が自覚していないかなど、じっくりと検討する必要があります。

なお、こうしたストレス病として発症する場合のみではありません。急激に体重が減った時、ダイエット、外科手術、がんなどで消耗した時などに発症することもあります。この場合、耳管の周囲の脂肪組織が減ったために、耳管が緩んでしまうのです。また、妊娠中や授乳中も症状がみられることがあります。潜在する病気に注意が必要な場合もあります。明らかに遺伝的な要素の関与も疑われます。親子や兄弟でこの病気を持っている方や、小児期から自覚されている方もおられます。

当院で行う主な検査

標準純音聴力検査 聴力を調べる検査
耳管機能検査 耳と鼻をつなぐ管(耳管)の動きを調べる検査
ティンパノメトリー 鼓膜の動きを調べる検査
自律神経機能検査 2分30秒にわたり指から脈を測定します。その結果を分析することで、自律神経の活動状況、肉体的疲労度、血流の良し悪し、血管の弾性度などがわかります。
心理検査
  • SDS(うつの傾向を評価)とSTAI(不安の程度を評価)
  • 症状のチェックリスト(そのような症状があるか、ないかの確認)
  • 症状の苦痛度(どのくらい辛いのか)
  • 睡眠習慣の評価(ちゃんと眠れる習慣を実践しているか)
その他
  • 耳鳴りのある場合は耳鳴検査で調べます。
  • 貧血など疑われる場合は、血液検査で血清鉄やフェリチン(貯蔵されている鉄)などを調べます。
  • 過去の検診時の検査結果の見直し。ほとんどの血液検査の結果は、高値の時にのみ異常と判断されます。ただ、別の考え方では、AST、ALT、γ-GTP、ステロール値、BUN、などが低すぎる場合、たんぱく質やビタミンの不足が疑われるといいます。

当院で行う主な治療

診療による病気への理解向上

初診から、再診へと進む過程で、一歩ずつ病気の理解へ向けて探索が進みます。遠方の方では、オンライン診療を利用する場合もあります。はじめの目標は、自身の病気の経過を理解して頂くことです。その先に納得がやってきます。さらにいわば、体得(腑に落ちる)の段階。この時点では、症状が改善あるいは消失することが可能となります。治るまでの時間は、経過やご自身との取り組み方次第で変化します。初診時には、簡易カウンセリングを実施します。また、ご希望の方には、マインドフルネス瞑想を体験して頂き、自宅でも開始して頂きます。

服薬

お薬を希望される場合、体質に応じた漢方を処方します。軽症の場合、これのみで改善することもあります。漢方薬(当院では体質を考慮し、腹診といって腹部の所見も参考にさせて頂く場合もあります。)やご希望の方には、アデホスコーワ顆粒(血流・代謝改善剤)、メチコバール(ビタミン剤)など処方します。

カウンセリング(自費)

経験の深いカウンセラーの指導のもとで個別化した指導で効率よく学習を進めること。現在のストレス対応は、それまでの生育過程で、誤って身につけてしまったストレス対応癖のなれの果ての必然の結果という側面もあります。こうした視点からは、病気は、偶然の出来事ではありません。病むに至った過程を振り返って、新たな自分を発見し、育てることは、人生の重要な体験の一つです。

その他心身の改善

鍼灸治療、アロマセラピー、音楽療法、アートセラピー、操体療法など

ご自身でできる耳管開放症対策

01

運動

日中の運動習慣は、新陳代謝を改善し、深い睡眠に必要な筋肉から分泌される多くの神経伝達物質を準備することにもなります。ただし、耳管開放症では、過度の負担のかかる運動は、かえって症状を悪化させます。実際、免疫系も過度の運動によって低下することも知られています。

02

食事改善

消化機能の充実、内容の改善、良質の脂質(オメガスリーの多い、アマニオイルなど)・十分な植物性たんぱく質の摂取が重要です。患者さんの8割は、やせ型の女性です。この場合、消化機能の衰えが潜在している場合も多いです。また、鉄欠乏貧血の方もいらっしゃいます。タンパク質、ビタミンB群、鉄などに十分配慮が必要です。

また、食品添加物を減らす、精製食品(白砂糖、精製塩)を減らして黒砂糖や天然塩にかえる、調理法の改善(特に揚げる、炒めるといった調理法を減らす)、糖化させない調理法を増やすなど、質の改善も重要です。

03

栄養補助

潜在的貧血、潜在的ビタミン欠乏など個別化した補完も大切です。

04

嗜好品の卒業

過度の飲酒や喫煙習慣は動脈硬化を促進し、細胞を窒息させます。

05

入浴

睡眠前の1.5時間から2時間以前に上がるか、朝入浴にしましょう。

06

睡眠

この病気に効果がある(特にやせ型、冷え症傾向の女性)加味帰脾湯は、もともと更年期の睡眠障害に効果のある漢方薬です。耳管開放症の方は、何より深い睡眠をとれるように、日中のライフスタイルに十分な配慮がいります。十分な睡眠は、日中の生活習慣によって実現できます。現代人の最も大きな問題点は、脳神経ばかりに負担をかけすぎることです。日々の運動習慣や、適切なストレス解消、リラクセーションがとても大切です。

07

テレビ・携帯・パソコン

視聴時間を制限し、脳神経活動の過剰な興奮、刺激過剰を卒業する。寝る前の1~2時間が重要です。特にやせ型の患者さんでは、日々神経の消耗傾向があります。可能な限り視聴時間を減らしましょう。

08

自己学習

リラクセーション訓練(緊張体質から脱却し、効率よい心身へと進化する)、マインドフルネス瞑想、自律訓練法、漸進的弛緩法なども効果的です。

◆推薦図書

  • 最高の休息法 CDブック 久賀谷亮著(ダイヤモンド社)
  • マンガでやさしくわかるレジリエンス 久世浩司著(日本能率協会マネジメントセンター)

◆マインドフルネス参考サイト

  • UTUBE マインドフルネス瞑想 ダイヤモンド社
  • 川野泰周 オフィシャルホームページ

よくあるご質問

Q

この病気は治るのでしょうか?

A

実際、他の耳鼻科で“この病気は、治りません”そう言われたと言って来院される方も少なくありません。実際専門家でも、手術的な方法(耳管ピン挿入手術)のみが有効だと信じ込んでいる現状があります。当院では、今日まで多くの患者さんを診断し、実際に改善しています。実は、私自身も耳管の開放を経験しています。実は、多くの方が無意識のうちに、耳管の解放した経験を持っています。ただ、耳鼻科医も含めてほとんどこの事実に気づいていません。疲労時、睡眠不足時など…例えば、海外旅行の帰国時など、いわゆる時差ボケの時にも、体験されているのです。耳管開放症として自覚されているのは、このような生理的な耳管開放症状の一部だと考えられます。

Q

先生が治してくれるのでしょうか?

A

医師の使命は、病気を治すことです。ただし、その役割は時と場合により異なります。医師の役割は大きく二つに分かれます。一つには、おぼれる人を救う治療、もう一つは、おぼれないように泳ぎ方を教える治療です。耳管開放症でも、しっかり救助すべき方がいます。この病気は、心身症すなわち、心と体のアンバランスが原因で発症することが多いです。これが行き過ぎると、神経が消耗して、うつの傾向が強まることもあります。

こうした方は、心療内科や精神科との協力のもとでの治療が必要です。精神的に落ち着きを取り戻してから、この病気の治療を開始すべき場合もあります。また、早急に改善したい方には、手術(耳管ピン挿入)を紹介する場合もあります。でも多くの患者さんは、病気をきっかけに、“ストレスとの付き合い方の学び直し”が必要で有効です。この場合、主役は患者さんご自身です。私たち治療家は、アドバイザーであり、道先案内人です。当院では、患者さん一人一人の、それぞれのユニークな回復の歩みを全力で応援します。

Q

治るのにどのくらい時間がかかりますか?

A

そう聞かれることもあります。これはそれまでの経過や、ご自身との取り組み方次第と考えています。

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