今から来年の花粉予防を!
来春のスギ花粉症を軽くするために
今から始める予防計画
花粉症は、春になって症状が出てから薬を飲むだけの病気ではありません。
来春の症状を軽くするには、
- 原因そのものに働きかける
- 花粉を体内へ入れない
- 鼻粘膜の炎症を早めに抑える
- 睡眠・呼吸・腸内環境など、身体全体の調整力を整える
という複数の対策を、時期に合わせて組み合わせることが大切です。
1.夏から秋:舌下免疫療法を検討する
毎年スギ花粉症で強い症状が出る方、薬を飲んでも十分に改善しない方、眠気などで薬を使いにくい方は、スギ花粉の舌下免疫療法を検討できます。(当院では、杉の舌下免疫療法は、現在、20名前後待ち状態です。ご希望の方は、早めに予約を)
舌下免疫療法は、少量のスギ花粉アレルゲンを毎日投与し、身体がスギ花粉に過剰反応しにくい状態を徐々につくる治療です。
通常の薬がその年の症状を抑える治療であるのに対し、舌下免疫療法は、免疫反応そのものを変化させ、病気の自然経過を修飾することを目指します。制御性T細胞やIgG4抗体などを介した免疫寛容の形成が考えられています。治療は即効性ではなく、一般に3~5年程度の継続が推奨されます。
スギ花粉の飛散期には新規開始できないため、夏から秋は開始を相談するよい時期です。開始前に、本当にスギ花粉が主な原因であるか、ダニ、ヒノキ、ハンノキなど他のアレルギーが重なっていないかを確認します。
なお、HD(ハウスダスト) ダニに反応のあり一年中鼻閉を自覚する方は、ダニの舌下免疫療法から開始しましょう。
舌下免疫療法はすべての方に適するわけではありません。喘息の状態、使用中の薬、口腔内の状態、妊娠予定などを含め、医師と相談して決めます。
2.今のうちに、鼻の状態を確認する
「花粉症だと思っている鼻づまり」に、別の原因が重なっていることがあります。
- 鼻中隔弯曲症
- 慢性副鼻腔炎
- 鼻茸
- ダニによる通年性アレルギー性鼻炎
- 血管運動性鼻炎
- 好酸球性副鼻腔炎
- 喘息
などです。
一年中鼻づまりがある、嗅覚が低下している、黄色い鼻汁が続く、夜間の咳や喘鳴がある場合は、花粉シーズン前に鼻腔所見や呼吸器の状態を確認しておきましょう。
3.秋から冬:身体の「リズム」を整える
睡眠不足、不規則な食事、慢性ストレス、喫煙、過度の飲酒は、鼻粘膜の状態や免疫調節を悪化させる要因になります。環境省も、十分な睡眠、規則正しい生活、禁煙、飲酒を控えることを花粉症対策の土台として挙げています。(環境省)
来春に向けて、次の基本を続けます。
- 起床・就寝時刻をできるだけ一定にする
- 朝の光を浴びる
- 食事時間を大きく乱さない
- 週に数回、無理のない歩行や運動を行う
- 喫煙を避ける
- 飲酒量を控える
- 風邪や鼻副鼻腔炎を長引かせない
花粉症では、鼻の感覚神経が過敏になり、その反動として鼻汁、浮腫、充血などの強い炎症反応が起こります。規則的な生活は、感覚の過敏さと炎症反応の間を調整する身体の働きを支えると考えられます。
4.腸内環境は「特定の菌」より、日常の生態系を整える
腸内細菌叢とアレルギー疾患の関連は研究されていますが、現時点では、特定の乳酸菌やサプリメントだけでスギ花粉症を確実に予防できるとは言えません。
大切なのは、腸内細菌が短鎖脂肪酸などを産生しやすい食生活を、無理なく続けることです。
- 野菜、海藻、きのこ、豆類を増やす
- 全粒穀物や適量の発酵食品を取り入れる
- 食品の種類を偏らせない
- 超加工食品や菓子類に偏らない
- 便秘や下痢を放置しない
- 急激で過度な食事制限をしない
- グルテンフリーを目指す
- 3食しっかり食べる。
腸内環境の改善は花粉症の代替治療ではありません。免疫寛容、粘膜バリア、全身の炎症調節を支える基礎づくりとして考えます。
5.呼吸法は「鼻を鍛える」より、全身の過緊張を減らすために
呼吸法だけでIgEやスギ花粉への感作が消えるわけではありません。
しかし、ゆっくりした無理のない呼吸には、
- 過換気を減らす
- 首や肩の補助呼吸筋を緩める
- 呼吸と心拍のリズムを整える
- ストレスや過覚醒を軽減する
- 鼻呼吸を保ちやすくする
という補助的な意義があります。
基本的な方法
1日1~2回、5分程度から始めます。
(呼吸法として取り組むには、呼気から始める、
鼻呼吸で口は閉じる)
- 背筋を無理なく伸ばす
- 気持ちを落ち着かせる
- 呼気:鼻から静かにゆっくりと吐く
- 吸気:自然な感じでゆっくり吸う
- 無理ない自然なリズムで繰り返す。
- 余計な力がは入っていたら緩める。
「深く吸う」より、「ゆっくりと吐く」ことがポイントです。
6.ヨーガ、ゆっくりした運動
私、ほりクリニック院長は、ヨーガの実践で、ほぼ花粉症を克服できました。
- 呼吸、姿勢、四肢運動の協調
- 身体内部の感覚への注意
- 過剰な筋緊張の軽減
- ストレス調整
- 睡眠や自己調整力の改善
を通じて、症状を悪化させる全身的な過緊張を和らげる可能性があります。
これらは標準治療の代わりではなく、身体のリズムと自己調整を支える補助療法として取り入れます。
7.年末から1月:来春の治療計画を決める
年末から1月には、前年の症状を振り返りましょう。
- 何月から症状が始まったか
- 鼻水、くしゃみ、鼻づまりのどれが中心だったか
- 目の症状はあったか
- 咳、喘鳴、息苦しさはなかったか
- 使った薬とその効果
- 眠気などの副作用
- 睡眠、仕事、運転への影響
毎年強い症状が出る方は、飛散開始後に受診するのではなく、飛散開始の1~2週間前までに薬を準備することが重要です。症状がごく軽い時期から治療を始めることで、シーズン中の症状を抑えやすくなります。(環境省)
治療には症状に応じて、
- 鼻噴霧用ステロイド薬
- 第2世代抗ヒスタミン薬
- 抗ロイコトリエン薬
- 点眼薬
などを組み合わせます。
特に鼻づまりが強い方では、抗ヒスタミン薬だけでなく、鼻噴霧用ステロイド薬を適切に使うことが重要です。
8.飛散シーズン:花粉を「入れない・持ち込まない」
花粉症では、吸い込む花粉量を減らすことが基本です。
スギ花粉は、晴れて暖かい日、乾燥して風の強い日、雨上がりの翌日、昼前後と夕方に多くなりやすいとされています。(環境省)
外出時
- マスクを顔に密着させる
- 眼鏡を使用する
- 帽子をかぶる
- 表面の滑らかな衣服を選ぶ
- 花粉情報を確認する
- 飛散の多い時間帯の長時間外出を避ける
通常のマスクでも鼻に入る花粉を大きく減らし、通常の眼鏡でも眼への花粉侵入を減らせます。(環境省)
帰宅時
- 玄関前で衣服の花粉を払う
- 手洗い、洗顔をする
- 可能なら洗髪する
- 洗濯物や布団を屋外に干さない
- 床をこまめに清掃する
- 換気は窓を大きく開け放さず工夫する
環境省は、花粉を避けることと、室内へ持ち込まないことを日常対策の二本柱としています。(環境省)
9.鼻洗浄について
生理食塩水による鼻洗浄は、鼻腔内の花粉や分泌物を物理的に減らす補助策になります。
ただし、
- 水道水をそのまま使わない
- 市販の洗浄液または適切に調製した生理食塩水を使う
- 強い圧をかけない
- 耳痛や鼻出血が出たら中止する
ことが必要です。当院では、NeilMed社のサイナス・リンスを配布させて頂いています。
鼻洗浄は薬物治療の代わりではありません。
10.早めの受診が必要な症状
次の場合は、単なる鼻花粉症として済ませず、早めに受診してください。
- 咳、喘鳴、息苦しさ
- 夜間や運動時の咳
- 嗅覚低下
- 強い頭痛、顔面痛
- 黄色や緑色の鼻汁
- 鼻出血の反復
- 片側だけの鼻づまり
- 薬を使っても眠れないほどの症状
花粉症に喘息や副鼻腔炎が合併していることがあります。
来春へ向けた優先順位
最優先
- スギ花粉症の診断と重症度を確認する
- 舌下免疫療法の適否を夏から秋に相談する
- 鼻、副鼻腔、喘息の合併を確認する
- 飛散前からの薬物治療計画を作る
- 花粉曝露を減らす
毎日の土台
- 規則的な睡眠
- 適度な運動
- バランスのよい食事
- 便通の安定
- 禁煙
- 過度の飲酒を控える
- 静かな鼻呼吸と呼吸法
補助的に取り入れるもの
- 生理食塩水による鼻洗浄
- ストレッチ
- ヨーガ
- オイリュトミー療法
- マインドフルネス
- ストレス調整
最後に
花粉症の予防は、身体を花粉から完全に遮断することではありません。
花粉への曝露を減らし、鼻粘膜の炎症を早期に抑え、必要に応じて免疫寛容を育て、睡眠・呼吸・消化・運動のリズムを整えること
が、来春を軽くするための現実的な方法です。
薬物治療、舌下免疫療法、生活環境対策を中心に据え、呼吸法や緩徐な運動は、身体全体の調整力を支えるものとして組み合わせていきましょう。





