『グー・チョキ・パー』 第2弾
グー・チョキ・パーで考える「人間の三分節」
― 頭で考え、胸で感じ、手足で行動する ―
私たちは普段、「人間の体」を臓器ごとに考えがちです。脳、心臓、肺、胃、腸、筋肉……。もちろん医学では、このように分けて理解することが大切です。
一方、アントロポゾフィー医学には、人間をもう少し大きなまとまりとして眺める**「三分節」**という考え方があります。
大まかにいうと、
頭部を中心とする神経感覚系=考える
胸部を中心とするリズム系=感じる
手足や代謝を中心とする四肢・代謝系=行動する
という三つです。資料でも、人間の働きをシンプルに「考える・感じる・行動する」と整理しています。
そこで今日は、難しい医学用語を離れて、誰でも知っている
グー・チョキ・パー
から考えてみたいと思います。
グー ― 「行動する」身体
まず、グーを作ってみてください。
✊
手を握ると、筋肉に力が入ります。
何かを握る。
持ち上げる。
引っぱる。
叩く。
道具を使う。
私たちは手足と筋肉を使って、外の世界に働きかけています。
アントロポゾフィー医学では、こうした四肢や筋肉の働きを、単なる「脳から命令されて動く装置」としてだけでなく、人間の意志が現れる場所として考えます。資料でも、四肢・筋肉を「人間の意志の表現器官」と捉えています。
ですからグーは、少し大胆に言えば、
「私は、やる」
という身体の姿として見ることができます。
パー ― 「感じ、受け取る」身体
今度はパー。
🖐️
手を大きく開いてみてください。
グーとはずいぶん感じが違います。
開く。
受け取る。
触れる。
相手に向かう。
さらに腕までゆったり開いてみると、胸も少し開いてくることに気づくかもしれません。
胸には心臓と肺があります。
心臓は収縮と拡張を繰り返し、肺では吸気と呼気が絶えず往復しています。ここには、
広がる―戻る
吸う―吐く
収縮―拡張
というリズムがあります。
三分節では、この胸部を中心とする領域をリズム系と呼び、人間の感情との関係を重視します。資料でも、胸部器官を人間の「感情の受容・表現」に関係するものとして位置づけています。
嬉しいと胸が広がる。
不安になると胸が詰まる。
ほっとすると、思わず息を吐く。
こうした日常語を考えても、感情と胸の感覚はかなり密接です。
パーは、
「私は、世界に開く」
という姿として感じることができます。
では、チョキは?
✌️
実は私は、ここが一番面白いと思っています。
グーとパーだけなら、
閉じる/開く
力を入れる/力を抜く
という二極です。
でも人間は、その二つだけではありません。
チョキでは、二本の指が分かれて方向をつくります。
そして二つを比べることができます。
「あちらか、こちらか」
「AかBか」
「これは同じか、違うか」
そこには、世界を区別し、関係づけ、認識する働きが見えてきます。
三分節では、こうした知覚や思考の働きを、頭部を中心とした神経感覚系と関連づけます。
資料では三分節を、
思考 ― 感情 ― 意志
という魂の三つの働きとしても整理しています。
ですから遊びとしては、
チョキ=「私は、見る・分ける・考える」
と捉えてみることができます。
もちろん、「医学的にグー=意志、チョキ=思考、パー=感情と証明されている」という意味ではありません。
これは三分節という人間観を、身体で理解するための小さな比喩、身体実験です。
グー・チョキ・パーは、実は全身運動
もう一度やってみましょう。
今度は指だけでなく、身体全体でやります。
グー。
少し身体を縮め、手を握る。
チョキ。
身体の軸を感じながら、二方向を意識する。
パー。
手を開き、腕を広げ、胸も空間へ開いていく。
やってみると、手の形だけを変えているつもりでも、呼吸や肩、胸、姿勢まで変化していきます。
前回ご紹介した肩帯の資料でも、腕の動きは肩関節だけで起こるのではなく、鎖骨、肩甲骨、胸郭へとつながっていることを見てきました。鎖骨は「つなぐ」、肩甲骨は「向きを変える」、そして手は「表現する」という流れです。
つまり手は、身体の末端にぶら下がった単なる道具ではありません。
身体全体の状態が、最後に表現される場所
とも考えられるのです。
健康とは、三つがうまく行き来できること
三分節で大切なのは、どれか一つが優れているということではありません。
考えてばかりでも疲れます。
行動し続けても消耗します。
感情だけに巻き込まれても苦しくなります。
私たちは、
考える
↓
感じる
↓
行動する
そして行動した結果をもう一度受け取り、また考える。
そんな循環を繰り返しています。
資料でも、人間を「二つの極と、それを取り持つ中間部」という三つの関係として捉えるのが三分節の基本です。
健康というものも、単に検査値が正常であることだけではなく、
考えること、感じること、行動することが、固まらずに行き来できること
と捉えることができるのではないでしょうか。
そんなことを考えながら、たまには子どもの頃のように、
グー ✊
チョキ ✌️
パー 🖐️
と手を動かしてみてください。
ただのじゃんけんが、少し違って見えてくるかもしれません。
グー ― 行動する。
チョキ ― 考える。
パー ― 感じ、世界へ開く。
人間は、この三つを一つの身体の中に持ちながら生きています。





